ファスニングテクノロジーの動向:最新の形態・機能
近年のファスナー技術のイノベーションには、より小型で軽量なパッケージを求める市場の要求に起因した、迅速かつ生産コスト効率の良いタイプが多く見られるようになりました。現在のファスナーはより強く、よりスマートに、より多くの方法で製品設計と開発を進めることが求められています。その結果、設計者は後からではなく真っ先に取付けハードウェアを指定することが一般的になっています。
ファスニング業界では、次々に新しいアイデアが生まれています。大手メーカーがアクティブな設計パートナーとして参加することが多くなり、日々進化するアプリケーションに対応するニーズを認識し、次世代の製品を生み出し、まったく新しい組立ソリューションを開発しています。
近年の注目すべき動向としては、特定の機能の永続性に重点を置いたファスナーのカテゴリーが拡大しているという点です。このようなタイプのファスナーは永久的に取付けることができ、緩いハードウェアの数を最小限に抑えることができます。接着剤やリベット、溶接など従来の接合方法の代わりに使用することができ、部品の分解を妨げることはありません。
このような新型ファスナーの主な利点は、部品の確実の取付けと、修理や交換のための取り外しが両立できるということです。つまり、取り外し必要性を除いて、ファスナーは永久に取り付けられるということです。
エレクトロニクス業界では、製造最終段階でのファスナー取付けの際、プリント回路基板に損傷を与える可能性がある(コストもかかります)という懸念がありました。これを解消するために進化したのがファスナーの表面実装機能で、現在ではファスナーはテープ&リールで供給され、他の部品と一緒に基板に直接はんだ付けされるようになっています。ファスナーが他の表面実装部品と一緒になることで基板の健全性が保たれ、二次加工が不要になり、組立工程が合理化され、また高価な廃材の発生も抑えることができます。
ファスニング技術の最大のトレンドのひとつは、部品の小型化です。コンパクトな部品設計は、本質的にハードウェアを配置・取付けするための空間を小さくします。ミニチュアファスナーの型式とスタイルは、電子機器から航空宇宙産業まで、時代とともに厳しくなる設計環境に適合するよう進化してきました。
非常に薄く、「極薄」の金属板にネジが必要な用途では、ミニチュアクリンチングファスナーは強力で永久的、かつ再利用可能なネジ付きソリューションを提供します。また、最小限のスペースで最適に使用できるように、端に近い位置に取付けることができるタイプもあります。
ミニチュアクリンチングファスナーは、薄型や「極薄」の金属板へのアプリケーションに強力で永久的、かつ再利用可能なソリューションを提供します。また、スペースを最小限に抑えるため端に近い位置に取付けることができるタイプもあります。
また、部品の小型化が進むにつれて配送システムと自動化も革新を遂げ、取り扱いと取付けがより簡単になりました。
中でも、ネジのゆるみは業界の長年の課題でした。小さなネジを手作業で挿入したり、従来の半自動化された電動ファスニング機にネジを1本ずつ投入する方法では生産性が低下し、コストアップにつながります。これまでのネジの挿入方法では、小さなネジの座面トルクを安定かつ正確に確保することができませんでした。
金型内ファスニングシステムは、スタンピング工程でファスナーを取付ける新技術として期待されています。プレス機(および金型)と連動してクリンチングファスナーを供給・装着するポータブルなシステムで、ファスナー挿入に必要な二次加工を省くことができるようになりました。このシステムは、金型内で2つの作業(スタンピングとファスナー取付け)を同時に行うことができるため、ユーザーは生産性・品質の向上およびコストの削減を実現し、市場競争力を高めることができます。
またファスナーの種類によっては、ハードウェア(または溶接ナット)を削減できる可能性があり、長年の課題であるアセンブリの部品点数削減への扉が開かれます。クリンチングファスナーでは通常、1本のおねじやナットで部品の取付けが完了します。これにより金具の数を半分に減らすことが可能になり、組立工程の短縮化やコストダウンにつながります。
他にも、従来の金属製ファスナーでは実現できなかったメリットを実現するために、革新的なファスナー素材が活躍しています。
例えばハイブリッドファスナーは、金属と射出成形されたプラスチックを組み合わせたもので、種類によっては通常のメカニカルファスナーよりも安価で軽く、操作や取付けが簡易です。またプラスチック製であることから、識別、安全、部品合わせ、美観などの目的で色分けをすることも可能です。ファスナーはこのように、「多機能デバイス」としての役割も担っているのです。
また製造の世界においても、新しい素材が持つ特徴が活かされています。例えば粉末冶金は、他の製造方法では不可能なファスナー形状や、高い機能性を実現するために使用されています。
他にも、耐食性に優れたステンレス製金具や、部品が組み合わされる際のズレを補正する新世代の「フローティング金具」設計など、注目すべき製品トレンドがまだまだあります。
最新のファスニング技術や製品を最大限に活用するための最善の方法は、製品設計者が部品設計の初期段階でサプライヤーのサポートを受けることです。その結果、また新たなファスニング技術のトレンドが生まれるかもしれません。